ayateck Local Stories

山形県酒田市の地域おこし協力隊・阿部彩人が、ローカルにある面白いものを、過去から現在そして未来へと続くストーリーを紐解きながらお届けするブログ。

酒田市・大沢地区の大平沢にて伝承行事「虫送り」と「百万遍念仏」に密着。続けていくのは大変。やめるのは簡単。でも、強い意志で継承する人達。

山形県庄内地方では、農作物につく害虫を追い払い、その年の豊作を祈願する「虫送り」という呪術的行事が行われている地区があります。酒田市の大沢地区内の各自治会でも6月前後に行われておりますが、神主さん(たよさま)を呼ばずに呑み会だけになっているところも多くなっています。

そんな中、大沢地区の大平沢では、たよさまも呼んで、神社での儀式の後に地区内をお祓いしながら練り歩くなど、しっかりとした形で行われておりました。

その、6月17日に行われた大平沢での「虫送り」の様子を取材して動画にまとめましたのでご覧ください。


【庄内の風景。】伝承行事「虫送り」@酒田市・大沢地区 大平沢八幡神社〜大平沢地区内

以下、写真でも振り返ります。

▼こちらが大平沢の地区内にある「大平沢八幡神社」の入り口。神社は81段の階段の上にあります。

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▼神社内にて、神主さん(たよさま)の小野さんによる神事。

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その後、階段を下って、地区の人が鉦と太鼓を叩き、神主さんがお祓いをしながら、地区内を練り歩きます。

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▼最後は、荒瀬川のほとりにてお祓いをして終了。

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▼終了後は、取材にお誘いくださった大平沢在住の池田和晃さんや、大平沢自治会長・遠田修さん、大平沢八幡神社の氏子総代・遠田俊行さんと一緒に自治会館で呑みまして、だいぶ盛り上がりました。

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その1週間後の週末、同じ大平沢にて「百万遍念仏」という伝承行事が行われるということで池田和晃さんからお誘いいただきまして、こちらも取材しました。

大平沢在住の女性が10人ほど集まって、「南無阿弥陀仏」にメロディーをつけた念仏を3箇所の場所で唱えてご先祖様への追善や祈祷を行う行事です。

▼まずは、動画でその様子をどうぞ。

以下、写真でも振り返ります。

夜18時に、大平沢八幡神社の前に集まる、大平沢在住の女性の方々。

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ここが1箇所目で、「南無阿弥陀仏」の1コーラスを3サイクル唱えます。その後、「南無阿弥陀仏」のメロディーを唱えながら2箇所目へ移動。

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▼山の方の道も通って移動。

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▼こちらが2箇所目。

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▼最後の3箇所目は、お墓の前。

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そして、終了。89歳の遠田乙女さんが先頭に立っていましたが、次の世代に受け継いで行く気持ちを他の人たちに話しているのが印象的でした。

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以下、百万遍念仏の取材にお誘いくださった、大平沢在住・池田和晃さんの解説です。

百万遍念仏とは自身の往生、故人ヘの追善、各種の祈祷を目的として念仏を百回唱えるとあります。
以前、大平沢では7/1を目処に三日間おこなわれていましたが、長老婦人の遠田乙女さんに聞くと近年は、6月の四周目の土日の二日間にしているということです。
大平沢では流行病、除災として代々導かれ受け継がれて今日まで至っています。南無阿弥陀仏を1サイクルとして3回続けます、乙女さんからは婦人方にこの行事は先代婦人方から受け継がれて来たので百万遍念仏を覚えて頂いて、絶対無くしてはならないので続けてくださいと、力強い教えがありましたね。

▼終了後は、大平沢の自治会館にて、先日の虫送りで取材させていただいたお三方とお酒を飲みながら改めてお話を伺うなど。

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▼昭和初期の百万遍念仏の写真などもありました。

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大平沢の2つの伝承行事を取材して、役員のお三方にもお話を伺って思ったことは、こういう行事を続けていくのは大変なことで、やめた方が楽だし、やめてしまうのは簡単なことだということ。

「虫送り」に関しても、たよさまを呼ぶことをやめて飲み会だけになっている地区には、その地区なりのやむを得ない事情があったんだと思うんです。各地区の中心メンバーの皆さんの高齢化も進んでおり、中心になって動ける人達の人数も少なくなってきている現状もあります。

でも、「続けなければいけない」という「重し」になっている人が大平沢にはいて、その中心には、「この地区から戦争に行って亡くなった人が1人もいなかった」ことで大層ご利益のある神社だと言い伝えられている大平沢八幡神社の存在があること。それらが、今でもこのように伝承行事をしっかりと続けている根源にあるのだということがわかりました。

▼ということで、【庄内の風景。】シリーズの動画です。

今回、大平沢の「虫送り」や「百万遍念仏」を映像に撮って、大沢地区の大平沢以外の集落に住む方々にもお見せしたところ、ご自分の住んでいる集落が属する自治会以外の行事の様子を見ることが初めてだという人ばかりでした。

大沢地区以外の地域に、大平沢での伝承行事の様子を発信しようと思って取材したわけですが、思いがけず、大沢地区内の方々にも興味深い内容の映像になったというのが、面白いなあと思いましたし、意味のある取材になったと思います。

また、先日たまたま知り合った酒田市・広野地区出身の加藤優来さんにこの大平沢の「虫送り」のお話をしたところ、広野地区は「虫送り」の聖地のような場所で、かなり盛大に開催されているとのことを伺い、その広野の「虫送り」も後日取材しました。その様子も動画にまとめて今後アップいたしますので、お楽しみに。

ちなみに、これも偶然だったのですが、大平沢の自治会長・遠田修さんは婿入りで大平沢に移住してきたわけなのですが、なんと、生まれが広野地区だとのこと。修さんが住んでいた当時は、広野での「虫送り」は開催されていなかった時期だとのことでした。そのようなミラクルなつながりも、酒田ならでは。いや〜、庄内、おもしぇの〜。

せば、まず。